日本語の文法、解説書や動画をみて、こんなにたくさんの用法があるんだな。
よし理解できたぞ!と思って
でも、外国人学習者から突然、
「私は米津玄師です」
「先生、この『は』は何ですか?」
と聞かれたら、相手に分かる形で説明できるでしょうか。
2026年7月に開催した「わくキャンの文法お悩み相談会」では、受講者のみなさんから寄せられた質問に答えるだけでなく、わくキャンのEラーニングで学んだ内容を、実際に学習者へ伝えられるところまで理解できているか、みんなで確かめました。
今回の文法会で見えてきたのは、文法を知っていることと、学習者に伝えられることは、同じではないということです。
質問がないなら、本当に理解できている?
今回の文法会では、よりみなさんに集中して文法を自信をもって使いこなけるようになって欲しいという思いから、最初にJICプログラム(初級文法を学べるテキスト)の第1章から第10章までを対象範囲に設定しました。
まず、参加者のみなさんに、
「この範囲で質問はありますか?」
と確認したところ、特に質問はありませんでした。
しかし、質問がないからといって、すべてを十分に理解できているとは限りません。
動画を見ているときには、
「なるほど、分かりました」
と思っていた内容でも、学習者から突然質問されると、うまく説明できないことがあります。
そこで、ちほみ先生から、実際のレッスンで学習者に聞かれやすい問いが出されました。
これがその問いです。
「私は米津玄師です」の「は」は何ですか?
普段、何気なく使っている「は」。
日本語教師として文法を勉強している方は、「話題やトピックを示す助詞」と理解している人は多いかもしれません。
けれども、その説明をN5を学び始めたばかりの学習者に、そのまま伝えて理解してもらえるでしょうか。
文法的に正しい説明を知っていることと、それを目の前の学習者に届く形へ変換できることは、別の力です。
今回の文法会では、正しい答えを確認するだけでなく、
「『は』はトピックです」
というように、学習者が理解できるシンプルな言葉に変えるところまで考えました。
難しいことを、難しい言葉のまま伝えるのではなく、学習者の日本語レベルに合わせて、小さく、分かりやすくする。
それが、実際に日本語を教えるときに必要な力です。
ちなみに、この「『は』はトピックです」とシンプルながら、学習者にスッとはいる『は』の説明の仕方は、
ちほみ先生がこちらの動画で解説をしています。14:35あたりから「は」の説明が始まります。
英語ですべて説明しない。分からない部分だけを補う
続いて出されたのは、こちらの問いです。
「私はモロッコ人ではありません」
「私はモロッコ人じゃありません」
この二つは何が違いますか?
参加者からは、
「『ではありません』の方が丁寧です」
という答えが出ました。
とても分かりやすい説明ですね!
しかし、初級の学習者は、「丁寧」という日本語をまだ知らない可能性があります。
そのような場合には、
「『ではありません』は、politeです」
と伝えます。
ここで大切なのは、説明のすべてを英語にするのではないということです。
「polite」の部分だけ英語に置き換えていますが、
- 「ではありません」
- 「は」
- 「です」
という日本語の表現や語順は、そのまま使っています。
英語が話せる教師ほど、詳しい文法説明を英語で伝えた方が、学習者にとって分かりやすいと考えることがあります。
もちろん、必要なときに英語を使うことは有効です。
しかし、すべてを英語で説明してしまうと、学習者が日本語に触れる時間は少なくなります。
JICプログラムでは、イマージョンの考え方を大切にしています。
学習者がまだ知らない言葉だけを、必要最低限の英語で補う。
それ以外の部分では、できるだけ日本語を使います。
すると学習者は、説明を聞いている間にも、
- 日本語の語順
- 助詞の位置
- 文末の形
- 教師が自然に使う日本語
を、繰り返し耳にすることになります。
本人は文法の説明を聞いているつもりでも、知らないうちにたくさんの日本語を浴びています。
「日本語だけで無理に説明する」のでもなく、「すべて英語で説明する」のでもない。
学習者が分からない部分だけを、知っている言葉で補いながら、できるだけ日本語の中で理解できるようにする。
これも、JICプログラムで大切にしている教え方の一つです。
文法を知るだけでなく、伝え方まで考える
同じEラーニング教材を見ていても、
「自分が文法を理解するために見る」のか、
「これを学習者に教えるとしたら、どう伝えるかを考えながら見る」のかによって、受け取れるものは変わります。
動画を見て内容を理解しただけでは、実際のレッスンで言葉が出てこないことがあります。
だからこそ、
- 学習者からどんな質問が出るか
- どの言葉なら初級の学習者にも伝わるか
- どこまで日本語で説明できるか
- 英語を使うなら、どの部分だけ補えばよいか
という視点を持ちながら、学んだ内容をもう一度見直してみることが大切です。
今回の文法会では、正解を競うのではなく、まず自分なりに説明してみる時間が設けられました。
すぐに答えが出なくても問題ありません。
実際に声に出して説明してみることで、
「自分はここまで分かっている」
「知識はあるけれど、学習者に伝える言葉がまだ出てこない」
という現在地が見えてきます。
分からないことに気づくことも、教師として成長するための大切な一歩です。
みなさんから寄せられたその他のご質問
後半は、参加者のみなさんが実際のレッスンで感じた疑問や、うまく説明できなかったことを持ち寄る時間となりました。
今回、次のような質問をいただきました。
- 「病院のスタッフのオンラインレッスンを教えています」と間違えた「病院のスタッフに」
が正しいと思うが「に」への訂正の仕方をどうやって説明したら良いか - 「テニスが上手です」はよいが、「仕事が上手です」「勉強が上手です」には違和感がある。どう説明すればよいか(上手・得意・下手・苦手の使い分け)
- 「最近」という言葉の間違った使い方(例:「最近とても嬉しいです」)をどう訂正す
ればよいか - 「電車を降ります」「空を飛びます」「大学を卒業します」の「を」(オブジェクトで
はない「を」)はどう説明すればよいか
どれも、日本語ネイティブであれば自然に使い分けている表現です。
しかし、
「なぜそうなるのですか?」
と聞かれると、すぐに説明するのは難しいですよね。
みなさんも、自分の中で答えを整理する→それを学習者のレベルにあわせて、どこまで伝えるか、どうやって伝えるか
ここまで意識して考えると、得た知識を使える形として自分の中に貯めていくことができると思います
分かったつもりを、教えられる自信へ
Eラーニングを見ているときには、
「なるほど、分かりました」
と思っていた内容でも、実際に質問されると、すぐに言葉が出てこないことがあります。
今回の文法会に参加して私自身も、
見ているだけだと、理解したつもりになっていたことに気づきました。質問として聞かれないと、そのまま聞き流してしまう部分もあると思いました。
と感じました。
動画を見る。
テキストを読む。
文法知識を覚える。
それだけで終わらず、学習者から聞かれた場面を想像し、自分の言葉で説明してみる。
そして、一人では分からなかったところを、先生や仲間と一緒に考える。
この繰り返しによって、知識が少しずつ、実際のレッスンで使える力に変わっていくのだと気がつきました。
文法を、知識から教える力へ
学習者から寄せられる質問には、教科書にそのまま答えが書かれていないものも少なくありません。
また、正確で詳しい説明が、必ずしも学習者にとって分かりやすい説明になるとは限りません。
だからこそ、
- どの言葉なら目の前の学習者に伝わるのか
- どこまで説明すれば十分なのか
- どの部分だけ英語で補えばよいのか
- できるだけ日本語の中で理解してもらうには、どうすればよいのか
を考える力が必要です。
わくキャンでは、Eラーニングで文法の知識と教え方を学び、毎月の文法お悩み相談会で、実際のレッスンと結びつけながら理解を深めています。
文法を学んで終わるのではなく、学習者に伝えられるところまで身につける。
一人で答えを探し続けるのではなく、先生や仲間と一緒に考える。
そんな学びを積み重ねながら、生徒に100%に応える先生を目指しています。
一緒に学びたいという方は、わくキャンでお待ちしています!






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