「〜てしまいました」の2つの意味をどう教える?完了と後悔の違い【8月の文法会レポート】

「〜てしまいました」の2つの意味をどう教える?日本人の感覚と文法説明のズレ【8月の文法会レポート】

こんにちは。わくキャンのマサです。

8月1回目の「文法お悩み相談会」を開催しました。

今回のテーマは、『JICテキスト』の21章〜30章です。

文法会では、その月のテーマ範囲についての質問だけでなく、参加者のみなさんが実際のレッスンで生徒さんから聞かれ、うまく説明できなかったことや、教えていて疑問に思ったことも持ち寄っています。

今回も、

「確かにそう言うけれど、どうしてだろう?」

「生徒さんに聞かれたら、どう説明したらいいんだろう?」

と思わず考えてしまう質問がたくさん出ました。

「読んでしまいました」って、残念な意味じゃないの?

会の最初に、参加者の方からこんな質問がありました。

「本を読んでしまいました」という文が出てきました。

「最後まで読み終わった」という意味だと習ったのですが、「〜してしまいました」には、何かしてはいけないことをしてしまったような、ネガティブな意味もありますよね?

この2つはどう違うのでしょうか。

たしかに、

「本を読んでしまいました」

という文だけを見ると、みなさんはどんな気持ちを感じるでしょうか。

「全部読み終わりました」

という意味にも取れます。

一方で、状況によっては、

「本当は読むべきではなかったのに、読んでしまった」

という後悔や残念な気持ちにも聞こえます。

実は「〜てしまいました」には、大きく2つの使い方があります。

一つは、動作が最後まで終わったことを表す「完了」。

もう一つは、不満・残念・後悔などの気持ちを表す使い方です。

形はまったく同じです。

だからこそ、学習が進んだ生徒さんから、

「先生、前に習った『〜てしまいました』と何が違うんですか?」

と聞かれることがあります。

私自身も「残念な感じ」がしていました

ここで私からも、ちほみ先生と参加者のみなさんに質問しました。

私は「本を読んでしまいました」と聞くと、完了よりも、

「楽しかった本なのに、もう読み終わっちゃった」

「もっと取っておきたかったのに読んじゃった」

という、少し残念な気持ちを感じてしまいます。

そこで、

完了の意味の「〜てしまいました」って、みなさんは実際にどんな場面で使いますか?

と聞いてみました。

すると参加者のみなさんから、実際の日常生活で使った例が出てきました。

たとえば、

夏休みの宿題を、もうやってしまった。

あるいは、

とても分厚い本だったけれど、あっという間に読んでしまった。

こう聞くと、

「ああ、確かに言う!」

と一気に実感が湧きます。

共通していたのは、簡単なことではなく、少し努力やエネルギーが必要なことを最後まで終えたときの達成感でした。

文法書に書いてある「完了」という言葉だけを見ていたときよりも、ずっとイメージしやすくなりました。

日本人としての「自然な感覚」が邪魔をすることもある

このとき、ちほみ先生から印象的な話がありました。

私たち日本語母語話者は、日常生活の中で「〜てしまいました」を、不満・残念・後悔の意味で使うことがとても多い。

そのため、教科書に完了の「〜てしまいました」が出てきても、

知らないうちに、自分たちが普段使っている感覚で文を解釈してしまうことがある

という話です。

今回の私が、まさにそうでした。

「読んでしまいました」

を見た瞬間に、

「読み終わって残念なんだな」

という後悔の方の気持ちで捉えていました。

でも実際の場面や状況をリアルに想像してみると、確かに「完了」の方の意味でも使っている。

文法書を読んでその例文を鵜呑みにするのではなく、実際に自分が、これだったらこの意味で使ってるよね

という場面や例文を考えることが大事だと思いました。

学習者さん自身が実感できる場面や例を探して伝えられるか、

今回のやり取りから、その重要性を再認識しました。

文法書の例文を「自分が使える例文」にしてみる

文法書を読んで、

「なるほど。これは完了を表す文法なんですね」

と理解することと、

生徒さんから、

「先生、でもこれって、いつ使うんですか?」

と聞かれることも多いです。

そんなときに大切なのは、文法書の説明をそのまま覚えるだけではなく、

自分自身が「確かに、この場面なら使う」と思える例を一つ持っておくこと

その引き出しを増やしていくことが大事だと本当に思います。

「〜てしまいました」なら、

「夏休みの宿題、もうやってしまったよ」

と聞けば、今回参加していたみなさんも一気に「ああ!」となりました。

自分が腑に落ちていない例文は、生徒さんにもなかなか伝わりません。

文法書を読み終わったところから、

「自分だったら、いつこの言葉を使うだろう?」

ともう一歩考えてみる。

それだけでも、教えるときの説明は大きく変わってくると思います。

今回は、こんなお悩みも出ました

今回の文法会では、「〜てしまいました」のほかにも、こんな質問や相談が出ました。

  • すでにかなり日本語を話せる中級以上の生徒さん。次に何を教えればレベルアップにつながる?
  • オンラインレッスンで、絵カードのような視覚教材を使うにはどんな方法がある?
  • 「貸してもいいですか?」という間違いはなぜ生まれる?どう訂正する?

文法そのものについての質問だけでなく、中級者のレベルアップの見極め方や、オンラインレッスンでの教材活用についても、参加者のみなさんから実際の経験やアイデアがたくさん共有されました。

一人の先生の悩みについて、ちほみ先生だけが答えるのではなく、

「私はこんな方法を使っています」

「私の生徒さんにも同じことがありました」

と、ほかの先生の経験も聞けるのが、文法会のおもしろいところだと思います。

参加すると、答えを聞くという受け身の姿勢でなく、「なぜだろう」と自分で工夫したり、考えたりする癖がつきます。

これが、教える仕事をする上で大事なことだと思います。

「正解を知る」から、「なぜ?」を考えられる先生へ

日本語教師だからといって、最初からすべての質問に答えられる必要はありません。

今回の文法会でも、参加者の方が実際のレッスンでその場では答えられず、

「これは私の宿題にします。次回までに調べてきます」

と生徒さんに伝えたという話がありました。

それでいいのだと思います。

大切なのは、そこで終わらず、

「なぜだろう」

「この生徒さんは、どう考えたからこの言葉になったんだろう」

「どう説明したら、次は自分で判断できるだろう」

と考えてみることです。

文法書を読み終わったあとに、

「自分だったら、どう説明しよう?」

生徒さんの顔を思い浮かべながら、どんな例文や場面を提示したら、生徒さんが実際に使える説明になるだろうか、と考えることを習慣にしてみてください。

ということをお伝えして今回の8月の文法会の締めとさせていただきます。

なお一緒に学びたい、そして「なぜ?」を考えられる力を身につけたいという方は、ぜひわくキャンへのご参加もお待ちしています!


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